世界からアーティストエッセイ アメリカ ミネソタブルーからヨコハマブルーへ。

Artist Essay

Mississippi River


昔からなんとなく川に興味があった。 ロンドンのテムズ川やニューヨークのハドソン川、長江や漢江など、世界の都市の発展を見守って来たそれぞれの川にはそれぞれの歴史があり、重要な役割を果たして来た。
アメリカにも川は無数にあるけれど、ここミネソタが源流のミシシッピが自宅のすぐ横を流れている。穏やかに流れるこの川は、ニューオリーンズでメキシコ湾に注ぐまで3779kmの距離を旅する。
夏の土手は緑がきれいに空に映え、ジョギングや犬の散歩をする人でにぎやかになる。冬は川自体が凍り、雪と氷の真っ白な世界。

仕事の合間にふと川の流れをみていると、無性にどこか旅に出たくなる。
どんどん妄想はふくらみ、買いもしないチケットをネットで
検索してみたりする。
どういうルートで行こうか、ここには何泊して。
そんな他愛も無い時間が今はすごい楽しい。
いくら年をとろうとも「旅をしたい」って好奇心だけは無くしたくない。
自分の常識や感性と全く違うものに出会った時にまた少し成長できる気がするし、ほんの少しだけ世界が平和になった気もする。今年はどこか行けるかな?

Gramma


ミネアポリス から、北へ一時間半程のところにある、St. Cloud(セントクラウド)という小さな街に「グランマ」、妻の祖母が住んでいる。
この夏に95才になるグランマはなんと一軒家に一人暮らし。
古〜いHONDAの車を運転してスーパーに買い物に行くし、たまにお酒もたしなむ。日課は庭いじりで、とにかく働いていないと落ち着かない様子。
テレビでフットボールやバスケットボールを観ては一人でワーキャー盛り上がり、
気付けば定位置のソファでお昼寝。
そんなグランマは敬虔なカトリックで、とにかく「慈悲」の人。
たまに遊びに行けば、「仕事はどう?」「日本の家族は元気?」「お腹すいてない?」と、いつも自分の事を気にしてくれるし、 家族の中で悲しい事が起こると真っ先にカードが届いたりする。常に誰かの事を想い、いたわり、そしてとびきりの笑顔で誰とでも接するグランマを見ていると、「信」という人間の根本的な力を感じさせられる。何かを強く信じることが出来る人は、自分を信じる事が出来る人なのかもしれない。

Gramma

Tomoyuki Aokiアメリカ・ミネアポリス在住
グラフィックデザイナー

空間設計デザイン・メモラーブルでのグラフィックデザイン業を経て2012年渡米、独立。レストラン、カフェ、ヘアサロン等のショップグラフィックデザイン、また各種企業のブランドデザインなど、日米それぞれを拠点に活動中。
tomoyukiaoki.com

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